生木地蔵〈生木山正善寺） はその昔より生木のお地蔵様と呼び古されていまして、その名
も高く青葉しげる楠の木にそのままおきざみおかれたるお地蔵様であります。それゆへ生木
のお地蔵様と申すのであります。その御線起を見まするに、わが高祖弘法大師様が一切衆
生済度のために、この四国八十八ケ所の御霊場を開かれんと山々谷々までも経巡られまして
はしなくも当地四尾山の麓に一夜の假寝をされました。その夜の御事、この山に輝光を観得せ
られ暁に至っては紫雲たなびくと共に世にも目出度き楠の大木を御覧ぜられました。また殊勝
の童子示現せられ、御霊告あり、み仏、「童子の化身を以ってわれに示し給う」とお大師様は、
三拝せられて、その夜この楠の大木に一刀三禮しの御霊刀をふるわれ、延命地蔵大菩薩の
御尊像をお彫刻なされましたが、早や暁、霊水を以て閑水となし開眼の秘事も済むまされその
ままこの所をお立ち遊ばされました。これわがお大師様が一夜の中にお彫刻なされました海内
随一の生木のお地蔵様であります。昭和二十九年九月二十六日洞爺丸台風の烈風にて楠の
御霊木は根本より倒れましたが、お大師様御自作の
お地蔵様は倒れず、昔日のお姿のまま御安泰で御座います。
